〜6〜



「塔矢!」

待てってば塔矢と、振り返ると人混みをかき分けるようにして進藤が走って来るのが見えた。

「おまえ、待てってば」

呆気にとられているうちに追いつかれ、逃げる間も無く手首をしっかりと掴まれてしまった。




「おまえさぁ、なんでこんな――」
「キミが悪いんだろう」

無理にふりきって逃げてしまおうかと思い、けれど気が変った。

あのまま情けなく殴られたままになっていればいいものをわざわざ追いかけて来たのだから文句の一つ二つ言ってやったってかまわないだろうと思ったのだ。

「え?」
「嘘ばかりついて、ぼくの知らない所で女性と遊んで」

一緒に住んでいるのに、恋人同士なのにこんなに浮気ばかりされたら、いくらぼくでも堪忍袋の緒が切れると言ったら進藤は驚いたような顔をした。

「もしかしておまえ焼き餅…妬いたん?」
「当たり前だ! キミの携帯のあのメールはなんだ、あの写真も今日のことだって」

そんなにもぼくに不満があるならそう言って別れて好きなようにすればいいじゃないかと、つい大声で怒鳴ってしまったら周囲を歩く何人かが驚いたように振り返った。

痴話げんかだよとちらり見る好奇の目さえ、でももうぼくは気にならなかった。

「おまえ……‥見たんだ‥おれの携帯」
「見たよ! 見て悪いか」

ずっとずっと帰りが遅くて放りっぱなしで、挙げ句の果てには知らない女から何人も電話がかかってくる。それでどうして見ずに居られると言ったら進藤は気まずそうにぎゅっと唇を噛んだ。

「だって‥おれは‥‥おまえがおれのことなんかあんまり好きじゃないんじゃないかって‥」
「なんでそんなこと!」
「一緒に居ても素っ気ないし、好き…とかあんまり言ってくんないし」
「だから? だから寂しくて浮気したって?」







思わず睨み付けると進藤は更にキツく唇を噛んで、それからため息のように言った。

「そう…じゃないけど…そうかも。おまえが少しは妬いてくんないかなって。少しはおれのこと惜しく思ってくんないかなって」

おれのことでおまえが取り乱すのを見たかったんだと言われて一瞬殺してやろうかと思ってしまった。

「だからって、浮気なんかしていいと思ったのか。ぼくがどれだけ傷つくかとかそういうことは考えなかったのか!」
「だっておまえ、家に女から電話かかって来ても全然平気だったし…」
「平気じゃないからこんな格好までして殴りに行ったんだろう!」

これでもうキミにちょっかいをかけてくる物好きな女はいなくなる。そのためだけにこんなみっともない格好までしたんだと怒鳴りつけるのと同時に涙がこぼれ落ちた。

「ぼくはずっと取り乱していた。キミを奪われまいと必死だったよ」

なのにどうしてキミにはそれがわからないんだと、子どものようにしゃくりあげながら言ったら進藤はぎゅっとぼくを抱きしめた。






文:しょうこさん





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