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以前取材で知り合ったメイクの人に頼んで洋服一式を見繕ってもらい、ついでに顔も作ってもらった。


「元がこんなに綺麗なんだから何もしなくてもいいようなものだけど」

でもどうせなら別人に見えるくらい派手にしてもいいわねと、ぼくの言った飲み会の余興という言葉を鵜呑みにしている彼女は、楽しそうに言うと目を際だたせ、頬に淡い紅を刷いた。


「ウイッグはどうする?」
「どうでも…ぼくはよくわからないので」

良いと思うものにしてくださいと言ったら彼女はかなり明るめの栗色のロングのウイッグを手に取った。

「長い黒髪ってのが一番塔矢くんには合うと思うんだけど、たまにはこういうのもいいかもしれないわねぇ」

見違えちゃうわよと言う言葉通り、鏡の中の顔はどんどん見知らぬものに変わり、体型が目立たないデザインの空色のスーツに着替えたら、多少体格はいいものの、そこに居るのはぼくでは無くて、知らない、会ったことも無い女性になっていた。




「うーん、会心の作!」

これで街を歩いても余程ドスの効いた声で喋りさえしない限り誰にも男だってわからないわよと太鼓判を押され、苦笑しつつ礼を言った。

「ありがとうございます。これでなんとか大役を果たせそうです」
「いいけど、一体どんな余興やるの? 出来れば私も一緒に行って反応を見たい所なんだけどなあ」
「すみません、本当に内輪での集まりなので…」


でもメイクはあなたにしてもらったのだと宣伝しておきますからと言ってメイク料にかなり色をつけて渡したらそれ以上は深く聞かれなかった。

「もうこんなことを頼むことは無いと思いますが、何かの時には絶対にあなたのお店に頼むことにします」
「頼むわよ、こっちは女の細腕一本で商売してるんだから」

言ってくれればいつでも一式持って伺うからと、そして行く道々に何人にナンパされたかを後で教えることを条件にしてぼくは彼女の店を出たのだった。





文:しょうこさん





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