〜12〜
おとなむけ
力なく横たわるアキラを見て、
一瞬、ヒカルはぼうっとしてしまいましたが、
すぐに気を取り直すと針を抜きにかかりました。
毒針はもう細くなっていたのでスルスルと移動しますが、
それでもうっかり突ついてしまわないよう、
慎重に腰を引かなければなりません。
無事に抜けた時には汗びっしょりになっていましたが、
急いでアキラの胸に耳をあてて、鼓動を確かめました。
・・・大丈夫、ちゃんと生きています。
改めて恋人の体を観察すると、
投げ出された脚の間から毒液が溢れ出していましたが、
それはあくまでも純白で、赤い色は混ざっていません。
毒針にも、アキラが傷ついた痕跡は見当たりませんでした。
本当に傷をつけていないなら、
このまま死なせずに済むかも知れません。
こうなったら一刻も早く毒を取り除こうと、
ヒカルはアキラの脚の間に顔を埋めて、
自分が放った毒を吸い始めたのでした。

苦くて舌が痺れるはずなのに、
アキラから溢れ出るものは甘くて、
とてもいい香りがしています。
ヒカルはうっとりとしながら、
ていねいにアキラの体を清めてやりました。
最後に体の隅々までを舐めるとやっと安心して、
体の強張りを解します。
「そろそろ目を覚まさないかな?」
ヒカルはそっと、アキラの寝顔を覗き込んでみました。

でもアキラの目が開くことはありませんでした。
そしてヒカル自身も吸い込まれるような睡魔に襲われると、
コトンと眠りに落ちてしまったのでした。
窓の外から一切を見ていたオオカミは、
家の中に入り込むと二人の匂いを嗅ぎました。
それから大きな口を開けると、
アキラをゴクリと丸呑みしてしまったのです!
次にヒカルを眺めてしばらく考えている様子でしたが、
やはり一口で呑み込んでしまうと、
森の奥へと姿を消してしまいました。