〜7〜 






 
「キミが教えることは、もうない、だって・・・?」

「もうオマエは一人前だよ。立派なコスプレイヤーだ」

「・・・・・・」

「そんな顔するなよ。オマエとは同室なんだし、これからも衣装のこととか相談にのるから」

「進藤、キミの役目はボクにコスプレの技を伝授することだったのか?
ボクが趣味でコスプレをするとでも思ってたのか!」

「だってオマエ、コスプレが楽しくなったんだろ?
そんなの見てればわかるし、それじゃ、罰ゲームの意味ねえし。
それにもともと、オマエが罰を受けるようなことしたわけでもないんだし」


「じゃあ、最初の日のあの罰ゲーム、あれは一体なんだったんだ!」

「あれは新入りが受ける儀式だよ。
一緒に悪ふざけすれば、いっぺんに仲良くなれるじゃん。
オマエは学期の途中で入ってきたから一人っきりだったけど、
4月になれば、女装させられた新入生がずらっと並んで、
どんちゃん騒ぎになるんだよ」

「・・・どんちゃん騒ぎとやらをした覚えはないけど」

「それはオマエがあんまり美人で、近寄り難い雰囲気だったから。
あの後、オマエ抜きではしたんだぜ、宴会。
それでもう少しオマエに庶民的になってもらうために、
毎晩、罰ゲームをさせようって盛り上がったのを、
オレが教育係をするからって止めたんだ」

「それでボクは、庶民的になったのか?キミの教育のおかげで。
罰ゲームが必要なくなるくらいに」

「うん、雰囲気がやわらかくなったぜ。
最近、皆から話しかけられることが多くなったろ?」

「・・・でもそれは、キミと一緒にいることが多いからだ。
ボク一人でいたら、誰も近付いてきたりしないよ。
何しろボク自身は変わってないんだから」

「そんなことない。オマエは変わったよ。
コスプレが好きになったのが、その証拠さ」

「コスプレを好きになってしまったから、罰ゲームはおしまいなのか」

「そんな寂しそうな顔、するなって。
罰ゲームを受けなくたって、いくらでもコスプレはできるんだぜ!
この寮には愛好会があるから、参加すれば友だちもどんどん増える。
オマエにはコスプレの才能があるし、ファンが大勢ついてる。
すぐに人気者になれるよ」

「ふざけるのもいいかげんにしろ。
ボクは、キミ以外にこんな姿を見せるつもりはない。
キミが望む衣装だから、身につける意味があるんだ」

「塔矢・・・・・・」

「進藤、どうしてキミはボクの教育係を志願したんだ。
同室のよしみか?」

「そう取ってもらっていい」

「・・・・・・本当にそれだけなのか?」

「塔矢、頼むからそれ以上聞かないで」

「なぜだ!どうしてボクの目を見ないんだ、進藤!」

ヒカルは悲しそうな顔でアキラに視線を向けた。
いつも日だまりのような笑顔を見慣れていたアキラは、
すぐに怒りを忘れて、とまどいながらヒカルの顔を見つめていた。



「オレ、オマエを一目見た瞬間に好きになってたんだ。
だから同室なのを利用して強引に教育係になって、オマエを独占しようとしたんだ」

「うん・・・・・・」

「オマエはもう、オレの恋人だってことにして、どさくさで本当に自分のものにしてしまうつもりだった」

「・・・・・・」

「オマエにコスプレの楽しさを教えて、毎晩、二人きりの時間を過ごしていれば、
オレに慣れて、頼りにするようになって、いつか好きになってくれるかもって思って」

「進藤・・・・・・」

「だけどオマエを毎晩見てるうちに、気がついたんだ。
オマエは見た目だけじゃなく、中身も本当に綺麗なヤツだよ。
小細工をして手に入れたりしてはいけないんだ。
誇り高い、本物の宝石なんだから、それにふさわしい相手だけが手を触れることが許されるんだ」

「それで、どうしてキミがふさわしくないと思うんだ?
ボクの気持ちをキミは無視するつもりか?
この、胸の疼きを一体どうしたらいいんだ、進藤」

「え・・・?」

「ボクはもう、キミの視線にさらされてからでないと眠れなくなってしまった。
最近は、せっかく眠ったと思ってもキミの顔がちらついて落ち着かない。
このモヤモヤした気持ちをどうしたらいいのか、
ボクに教える義務がキミにはあるはずだ」

「そんなの、オレだって同じだよ。
オマエのコスプレを見ないと眠れないし、
寝たと思ってもすぐ目が覚めちまう。

でも、ゲームをやめれば元に戻るよ。
・・・・・・もう、やめなくちゃいけないんだ。

同世代の友だちと付き合ったの、オレが初めてなんだろ?
だから、オマエは勘違いしてるだけなんだよ」

「いや、ボクはやめるつもりはない。
これが勘違いでも構わない。
身を滅ぼす毒ならそれでもいい。

最後の一滴まで飲み干す覚悟はできている。

ボクはキミが好きだ。
キミとしか、コスプレをする気はないんだよ」




このとき、ヒカルの大きな瞳がきらっと輝き、アキラをじっと見つめながら囁いた。

「それは本気?」

アキラは静かに頷いた。

「じゃあ、ちょっと待ってて」


ヒカルは棚から包みを一つ取り出すと、アキラの元に戻った。

「本当にオレと二人きりのコスプレを続けたいなら、その間、オレの要求には無条件で従ってもらう。
ゲームの間はオレに服従することを誓える?塔矢」

アキラは表情を変えることなく頷いた。



「それじゃ、オマエの誓いが本物かどうかテストさせて」

「何をすればいいんだ」

「今すぐオレの前で脱いで、全部」



アキラはヒカルから目を逸らさずに、衣装を一枚ずつ取っていった。
ヒカルも喰いつきそうな視線で睨んでいたが、
やがてアキラが生まれたままの姿になると、小さな袋を手渡した。

「これ履いて」

それは、黒の網タイツだった。
袋を破いて取り出してはみたものの、どうしたものかとアキラは逡巡したが、
すっと椅子に腰を下ろして大胆に足を組むと、
爪先から優雅な仕草で網目を滑らせてみせた。


ヒカルはカメラのメモリーを新しいものに入れ替えると、
遠慮なくアキラの裸身を撮り始めた。






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