5.裸身おとなむけ





          「塔矢、俺、お前が好きだ。
           …夢の中でいつもお前を抱いてる。
           お前も俺が好きだとわかって、さっきはああ言ったけど
           本当はとても嬉しかったんだぜ」

          「それじゃ、何故すぐに教えてくれなかったんだ?
           どうしてあんな意地の悪いことを…」

          「言っただろ?男同士なんてお前には似合わないって」

          「そのことは自分でもう何度も考えた。
           だけど君への想いを断ち切れないまま、
           偽りの愛情で他の人と法的に結ばれることに何の意味がある?
           僕が本気で欲しいのは、進藤ヒカル、君なんだよ!
           …僕がむしろ気に掛かっているのは、君のことだ。
           同性同士の恋愛は確かにリスクが高い。
           それを君に負担させたくはない。だから一晩だけでいいんだ。
           君と確かに身も心も結ばれたという記憶が残れば、
           僕は自分の気持ちを封印できると思う。
           もう誰も愛さない。誰とも結婚するつもりもない。
           だって恋人として共に暮らすことはかなわなくても、
           ライバルとして、友人としてなら
           一生君は僕の傍にいてくれるんだろう?」

          「お前はそれで良くても、
           俺の方は一度お前を抱いちまったらもう後には引けないんだって!
           今までだって、
           お前を見るたび抱き締めたくなるのを
           必死になってこらえてきたんだぜ!
           一度許されてしまったら、
           友達同士の付き合いだけで満足することなんてできねぇよ…」

          「でも僕は、このままでは
           とても君と普通に付き合うことなんてできないんだ!
           今に人前でも構わず君に抱きついてしまいそうなくらい、
           切羽詰まっているんだから。
           君が僕を抱けないというのなら、しかたない、
           もう君とは顔を合わせないようにするしかないよ」

          「…クソ!俺が欲しいのはお前だけなのに!
           そのお前と好き合っているから会えなくなるなんて、冗談じゃねえ!
           ……わかった、今夜寝よう、塔矢。
           でも今夜だけじゃすまねえぜ。
           明日の朝も、昼も、夜も抱くからな。
           その後だって、毎日抱いてやる!
           これからずっとだ。いいか、覚悟しておけよ!」

          「覚悟はとっくにできている。嬉しいよ、進藤。
           でも君、そんなに身体がもつのか…?」

           アキラの満足そうな顔を見た時、
           ヒカルの脳裏に「ハカられた?!」という疑惑が走ったが、
           それならそれでいいと思った。
           何しろヒカルは塔矢アキラを丸ごと手に入れたのだから。

           ヒカルはアキラを引き寄せて、そっと唇を触れ合わせた。
           すぐに離れてアキラの幸せそうな表情をじっくりと楽しむと、
           再び唇を合わせて今度はグッと押しつけ、
           舌でアキラの唇の表面をちろちろと嘗め回した。

           アキラはキスをするのも初めてだったらしく、
           呼吸のタイミングがつかめず苦しそうになってきた。

           キスを中断するとアキラは急いで息を吸おうと口を小さく開けた。
           ヒカルはその機会を逃さず舌を差し入れて、
           上顎の裏を撫でてからアキラの口内に溜まった唾液を味わい、
           びっくりして縮こまっている舌を舐め上げ、吸い上げた。

           アキラはすっかり身体から力が抜けて、
           ヒカルの腕の中でぐったりとしている。
           ヒカルはその耳に「愛してる、塔矢」と囁きかけた。

           アキラはゆっくりと目を開けると、ヒカルに微笑みかけて言った。

          「後は君が脱がせてくれないか?進藤…」

           ヒカルはアキラから毛布を剥いで、黒いセーターの裾をつかむと、
           ゆっくりと脱がせ始めた。

           徐々に露出する肌に唇を押し付けたり舌を這わせたりすると、
           アキラの身体にさざ波のような震えが走った。

           やがて顔を覗かせた胸の蕾は寒さのせいか快感によるものか、
           ツンと勃ち上がっていた。
           そこを唇で挟んでしごいたり、
           舌をとがらせてリズムカルに突付いてみると、
           アキラはやがて小さな喘ぎ声をもらし始めた。

           アキラの下着に隠されている部分は、既に勃ち上がり始めていた。
           いきなり強い刺激を与えないようにと気をつけながら
           そこも露わにしてしまうと、
           アキラの身体はますます赤みを帯びて、
           仄かに光を放っているかのように思われた。

           既に先走りで潤んだ先端は、
           ヒカルがそっと舐めるとふるふると揺れて、
           後から後から透明な液体があふれ出てきては、
           まあるく膨らんでこぼれ落ちていった。

           余り性急にしては初体験のアキラにはきついだろうと、
           じっくりと攻めることにヒカルは決めると、
           アキラの手の甲に恭しく口付けて、
           指の間や掌に舌を這わせて反応を確かめた。

           アキラは身体を隠そうとする素振りすら見せずに、
           ヒカルの視線と愛撫に身を任せている。

           そんな無防備な姿を晒しているのが可愛くて
           つい苛めたくなってしまい、
           脇腹を下から上へと舌で辿り、そのまま脇の下を柔らかく食むと、
           アキラはくすぐったいのか感じているのか身をよじって、
           ヒカルの唇から逃げようとした。

           身体をひねって背中を向けたところを手首をつかんで覆いかぶさり、
           うなじから肩にかけて入念に口づけたり耳たぶを甘噛みしたりする内に、
           アキラは観念したのか再びおとなしくなった。

           肩甲骨に沿って軽くつめを立てながら指でなぞり、
           背骨のあたりを舐め、
           腰骨の上の柔らかい部分に吸い付いて赤い印を散らせると、
           腿から膝裏、脛から足の裏へとヒカルは愛撫を続けていった。

           ぐったりとしたアキラの身体を再びそっと仰向けにすると、
           また上半身から指と口とで愛撫を加えていったが、
           悦楽の涙をこぼし続けてぐしょぐしょになった部分はわざと外して、
           膝をねぶり、足の指を一本ずつ口に含んでやさしく舌で刺激した。

           アキラは感じすぎてつらいのか、
           目に涙を溜めてヒカルを懇願するように見つめてくる。

           愛しい気持ちが募ってやさしく微笑みかけると、
           ヒカルは一気にアキラの屹立したものを口中に収め、
           両手も使って激しく擦り上げた。

           悲鳴のような叫びを一声上げ、
           あっという間にアキラはのぼりつめて、
           ヒカルの口の中に達した印を放ってしまった。

           荒い息を整えながら、アキラは咎めるような目でヒカルを見た。
          「まさか君、飲んだのか…?なんでそんなことを!
           …それにどうして君はまだ服を着たままなんだ?」

           ヒカルはにっこり笑うと自分も服を脱ぎだしたが、
           気だるげに身体を起こしたアキラに途中ではばまれた。

           アキラはヒカルのシャツのボタンに手を掛けると、
           一つずつゆっくりと外していった。

           重ね着していた上半身を剥いでしまうと、
           胸でプクンととがった部分を舌で触れて
           ヒカルの反応に嬉しそうに笑ってみせ、
           ジーンズの裾を引っ張って脱がせ、
           さっさと下着も取り払って裸にしてしまった。

           二人とも全裸になって改めて抱き締め合うと、
           お互いの体温が混ざり合ってその熱さに思わず溜め息がこぼれた。

           アキラはさっきのお返しとばかりに
           ヒカルの身体にたどたどしく口づけ始めたが、
           既に限界にきていたヒカルはアキラの動きを封じると、
           「もう我慢できない」と耳元で囁いた。

           アキラはちょっとの間躊躇していたが、
           何事か決心した風で布団を抜け出し、
           机の引き出しを探って取り出したものをヒカルに手渡した。

           それが男同士の行為で用いる潤滑剤であるのを確認すると、
           ヒカルは呆然としてアキラを見つめた。

           自分がアキラを好きなように抱いているのだとばかり思っていたが、
           やっぱりちらっと感じた通り、
           すべてはアキラの計算通りに運んでいるのではないだろうか?

           …だが仮にそうだったとしても、別に構わないではないか。
           お互いに欲しいものを手に入れたことに変わりはないのだ。


           ヒカルはローションをたっぷりと手に取り人肌に暖めると、
           うつ伏せになったアキラの奥にゆっくりと指を差し入れ、
           慎重にほぐしていった。

           指を徐々に増やしながら、浅く深く出し入れすると、
           頃合いをみてアキラが感じるポイントがどこにあるのか探ってみる。

           それはあっけなく見つかり、何度か刺激するだけで
           さっき萎えたばかりのアキラのものはみるみる元気を取り戻していった。

           アキラの奥が熱くなり、
           とろけるように柔らかくなったのを確認すると、
           その時を辛抱強く待っていたヒカルは
           アキラの腰をしっかりつかんで固定して、
           背後から自分のものを挿入した。

           熱くまとわりついてくる粘膜の感触に眩暈をおぼえながら、
           しばらくは浅いところで出入りを繰り返し、
           落ち着いてきたところを見計らってゆっくりと、
           アキラの身体に全部を埋めた。

           とうとう身も心も繋がった喜びに、二人の身体は震えていた。
           いよいよ余裕のなくなったヒカルは激しく腰を動かし始め、
           同時にアキラのはちきれそうになったものも後ろから握って
           リズムを合わせて擦りあげた。

           そしてアキラがとうとう堪え切れずに快感を訴える叫びを上げ始め、
           絶頂を迎えたのと相前後して、
           ヒカルも愛する者の身体の中へと、何度も何度も放ったのだった。









                       〜おしまい〜




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