2.埋み火





           進藤ヒカルは最近、アキラの視線に悩まされていた。

           彼から挑戦的に睨みつけられるのには慣れっこだったが、
           近頃その瞳が浮かべる表情が変化してきて、
           熱を帯びて潤んでいたり、
           いかにも切ないといった様子が窺われるようになったのだ。

           それもほんの一瞬ちらっと浮かべるだけなので、
           そこにどんな意味が隠されているのか見極める暇もないのが、
           更にヒカルの困惑に拍車をかけていた。

           アキラは自分の変化に気付いているのかいないのか、
           問いただしてみようとする時には
           既に普段の様子を取り戻しているので、
           「お前、さっき・・・」と言いかける言葉を出さずに飲み込んで、
           見て見ぬ振りをしているヒカルだった。

           しかし心に引っ掛かっていることは夢には正直に現れるようで、
           アキラが気になる視線を向けてくるようになってからしばらくして、
           ヒカルは頻繁に彼の夢を見るようになってしまった。



           夢の中で、アキラはあの熱っぽい視線をヒカルに向けてくる。
           理由を訊いても何も答えず、ただじっと見つめているだけなのだ。

           そうやって何度か無言のアキラと見つめ合って過ごしたある晩、
           ヒカルは知らず知らず手を伸ばして彼の顎をつかみ、
           あっと思った時にはもう唇を重ねてしまっていた。

           夢だというのにやけにリアルなその唇の感触にゾクリと身が震えて、
           一気に意識が現実世界へと浮上していった。



           夢から醒めると、ヒカルの下着は汚れていた。

           女の子と付き合った経験はあるので、
           自分が性的にノーマルであることを今まで疑ったことはなかったが、
           本当は違ったのだろうか?

           それとも夢の中で友達と恋人がごっちゃになるなんてこと、
           よくあるのだろうか?

           それからというもの、
           アキラが視界に入る度に律儀に反応する自分の身体を、
           ヒカルは持て余すようになっていた。




        next