ラブ・キャンディー




                                        めるじ

                                                       






それは一ヶ月前のこと。

ヒカルはアキラにおねだりをして、
おやつのチョコを分けてもらったことがありました。

そんなことをしたのは、バレンタインデーの日だったから…
でもアキラは、ちっとも気がついてくれなかったのです。

碁を打って、けんかして、仲直りして、
楽しく一緒に過ごす日々。

今日もいつものように二人で遊んでいると、
突然ヒカルが、
ペロペロキャンディーをアキラの手に押しつけました。

「この間のチョコ、サンキューな…」

チョコレートのことなんてすっかり忘れていたのに、
どうして今頃になってお返しを?

アキラは不思議に思いましたが、
ヒカルはちゃんと自分の分も持っているので、
そのまま受け取ったのでした。










「進藤、ありがとう。美味しそうだね!」
「なめてみろよ。うまいぜ?」

アキラはこういうキャンディーを食べるのは初めてなので、
恐る恐る、プラスチックの皮を剥きました。

可愛いピンク色の舌を覗かせて、
目をつぶってペロリと舐めてみたら、
固いけど甘くて、いい匂いがして、
後はもう夢中になってぺろぺろしてしまったのでした。

まだ大きなのをパクリと頬ばり、
じっくりと味わっては口から出して、
光に透かして眺めて、
また咥えて、出して、入れて、……

「うまい?」
「うん!」
「気に入ったか?」
「もちろん」
「それじゃこれは?」
「あっ……!」











ヒカルがくれたのは、飴よりも甘い甘い初めてのキス。

アキラはうっとりと目を閉じて、
柔らかくて暖かなヒカルの唇を味わいました。

それは、いつまで舐めても吸っても
尽きることなく甘いシロップが湧き出る魔法のキャンディー。

「これは、…気に入った?」
「ぁ、……もっと…」

「いいぜ。これはオマエだけのものだもん」
「そんないいものを貰ったら、それに見合ったお返しをしなくっちゃ…」

「じゃあ、さっそくもらおっかな〜」
「え、何を?」

ヒカルはそっと自分の唇を指さすと、
アキラをじっと見つめました。

その期待に満ちた表情を見て、
アキラは急に恥ずかしくなってしまいましたが、
ヒカルがいつまでも待っているので、
ためらいがちにそっと唇を寄せたのでした。

ヒカルのとろけるような笑顔に、
アキラも嬉しくなって自然と笑みがこぼれます。

二人、肩を寄せ合って、
絡め合う小指と小指…

それは口には出さなくても、
「ずっと一緒」の誓いの儀式。

こうして初めてのホワイトデーは、
微笑みとキスとクスクス笑いで
幸せに過ぎていったのでした………





〜おしまい〜













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