もう一つの秘密 (2)











「塔矢、…とう、や…!」

「あ…、……進、藤?」

「どうした、夢でも見てた?」

「あ、……あぁ。それじゃ、やっぱりあれは夢だったのか…」













「オマエの寝言、珍しいよな。

嬉しそうに笑ってたのに、急に苦しそうになってびっくりしたぜ」

「そ、それは。キミのせいだ!」

「え?なんでだよ〜」

「キミがいつまでも、しつっこくキスするから、そ、それで息が苦しくなったんだ!」

「え?夢の中でまでオレとキスしてんの?オマエ、可愛いやつ〜」

「別に、キスの夢、というわけじゃない」

「それじゃどんな夢?」

「…北斗杯の夢だよ」

「へえ。いつのやつ?」

「一番初めの。キミ、永夏に負けて大泣きしてた」

「ちぇ〜、よりによってなんで最初の北斗杯なんだよ〜
その次からはオレ、ちゃんと勝ったじゃん!」










「うん。あれからキミ、本当に強くなった。
あのとき大将を任せたのは正解だったよ」

「負けちゃったのに?」

「倉田さんもボクも、キミの成長に賭けてたんだよ。
確かに負けは負けだけど、
キミは一回りも二回りも大きな器になった。だからそれでいいんだ」

「なんだよ、オマエはオレの育ての親かよ〜」

「いや、それは違うな。キミを育てた人は他にいるだろ?」

「そりゃまあ、うちの親がいるけどさ」

「そうじゃなくて。キミに碁を教えた人のことだよ」

「………」

「その人がボクの夢に出てきたんだ」



それからボクは、彼の肩のあたりをじっと見つめた。


「なあ、オレの後ろに誰かいるの?」

「うん、烏帽子をつけた人が」

「え、まじ?」

「どう思う?…まあ、キミにはいつか話すかもしれないな」

「なんだよそれ〜」



それから進藤は、ボクになだめるような、やさしいキスをくれた。
そしてすぐに口付けは深く乱暴なものになり、
意味のあることを話すことなんて、出来なくなってしまったのだった。










進藤がボクの言ったことをどう思ったのかは知らない。

夢なんて忘れてしまえとでもいうように、激しく何度も愛されて、
この話題はそれっきりになってしまったけれど、
そこに深い意味などないのかもしれない。

…それともやっぱり、彼の秘密と直結しているのだろうか。



ボクは、時折、あの狩衣の人のことを思い出している。
ボクにとっては、
大切な恋人に碁を教え、ボクに引き合わせてくれた恩人なのだ。



「進藤を育ててくださってありがとう。
そしてボクに、彼を授けていただいて感謝しています」

自然と湧き上がる熱い気持ちに素直になって、
ボクは目には見えない人に、深々と頭を下げるのだ。

いつかボクのことも振り向いて、一局打ってもらうのを夢見ながら。





後書き